太陽の中心部の核融合反応で発生したエネルギーが太陽の表面から放出されます。 太陽の表面は光球、彩層、コロナに分けられます。 図12に示すように 太陽の彩層には多くの小突起構造であるスピキュールがあります。 彩層の底部から上部に高速で上昇するプロトン(H+)が磁気的作用により運動が揃えられて速度を増加して衝突電離している領域で発光しているのが観測できます。 プロトン(H+)がコロナの領域に到達すると密度が減少するので、平均自由行程が長くなり衝突電離は減少します。

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5.2 彩層における荷電粒子の磁気的相互作用

 









Fig.16 HINODE photographed in November 2006
(© NAOJ/JAXA) ( Source: https://hinode.nao.ac.jp/news/results/iris-1/ )

 太陽の表層においてはH+の持つ運動量で電子の運動は変えられますが、電磁波や電子の運動量によってH+の運動を変えることができません。 並走する高速のH+が平行電流の磁気的引力が作用し、H+が電子(e-)と高速で並走すれば逆方向の電流となり磁気的に反発します。なお、太陽風は1,000km/sec 以下の速度であり、光の速度の300分の1以下であり、相対論の効果は無視できます。
  磁場はその場所に磁石あるいは電流があると作用するという性質を記述したものです。運動する点電荷は局在する瞬時的な電流として、平行して運動する電荷の電流に対して、進行方向に垂直な平面を並走する点電荷に対して、距離に反比例する引力が働きます。 その並走する2個のH+の磁気的相互作用は微視的な電流間の磁気的相互作用としてビオ・ザバールの法則と、ローレンツ力により記述できます。
 他方、並走する2個の荷電粒子の間で働くクーロン力は速度によって変化しません。そのクーロン力は3次元的に放射する方向に距離の2乗に反比例して作用します。そこでて、並走する2個のH+の磁気的な引力がクーロンの斥力と等しくなる距離deqが(11) 式の関係から得られます。

             μ0(qv)2/(2πdeq) =(q)2/(dseq)2       (11)

という関係は秒速100㎞/secの高速 (60万Kに相当) の場合には,(12)式の関係が得られます。

              deq =0.5 /(10-7x1010)≒0.5[mm]     (12)

 高速で運動しているH+がdeqより離れている場合には磁気的な結合力がクーロン力より強いです。しかし、間隔が大きくなるに従い磁気的な結合力も減少します。
  H+と共に動く磁界が垂直方向に電界を発生してその電界に電子が引き寄せられます。 H+と反対方向に高速で運動する電子とは磁気的に引き合いますが、衝突して再結合する機会はわずかです。 太陽風のプラズマの寿命が長いのは高速の荷電粒子が持つ磁気的な相互作用によります。


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